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  • Apr.14 Lisbon

    未曾有の災害後のある晩、パウロからリスボンにおいでよとメールがあった。
    その頃のわたしは仕事の予定もなく、日々続く余震に少しまいっていた。すぐにオンラインでチケットを調べると翌週水曜日の便がすんなり取れた。
    「来週水曜日の21:30にリスボンの空港に着く便で行くね。」とメールをすると、OKの返信があった。

    パウロとはその前年に一度あっただけ。住所も知らない。もしパウロが空港にいなくても、どこかホテルに泊まってゆっくり休んで帰ればいっかと考えていたが、到着ゲートを抜けると「今井美奈」と書かれた大きな紙をかかげたパウロがいた。

    パウロの家に着くと、家とわたしが使わせてもらう部屋の鍵と、一枚の紙を渡しながら、「リスボンの人はみんないい人だから道に迷ったら誰でもいいからこれを見せて。」と言った。紙には彼の家の住所と電話番号、そして「彼女は僕の友人です。道に迷いました。僕の家まで送ってください。」とポルトガル語で書かれていた。

    翌日、近くのカフェで朝ごはんを食べて、「20時くらいに帰るから家で夕ご飯を食べよう。」と言って彼は仕事に向かった。
    わたしはいったん家に戻り、バルコニーでのんびり過ごした。4月のリスボンは穏やかな陽射しに新緑が綺麗で、少し潮の香りがする風が気持ちよかった。
    午後から街を歩いた。石畳みがキラキラと光っていて街が光で満ちている。
    朝ごはんの時にパウロから聞いたベレンの塔へ行ってみる。エメラルド色をした海が目の前に広がった。どこまでも。400年以上も前、ポルトガルの人たちはここから日本へ来たんだなと考える。
    夕ご飯の時にベレンの塔に行ったこと、海が綺麗だったとパウロに話すと「それは海じゃないよ、川なんだ。」と教えてくれた。

    コーヒーは好き?と聞かれうんと答えると、リスボンでしか伝わらないけどと言って「 Umabicca faz favor 」と紙に書いてくれた。ウマ ビッカ ファッシュ ファボール、これはコーヒーを1杯くださいという意味でビッカはリスボンでしか通じないそうだ。そしてパステルデナタは食べるべきと教えてくれた。

    22時過ぎ、インターフォンがなる。「ハーイ。」とパウロの友人のリタとアレックスが箱ワインを持って遊びにきた。すぐに2人とも意気投合して遅くまで大いに飲んで話した。眠くなったわたしはまだ盛り上がってるみんなを残して部屋へ行き、布団に入ったと同時に眠りに落ちた。
    翌朝、リビングに行くと、3人が床やソファで寝落ちしている。
    ポルトガルは多くの職場がフレックスを導入しているようで、いつものことだと慌てることなく9時に、10時に「またね。」と帰って行った。そしてパウロも仕事に向かった。

    わたしは、近くのスタンドへ。そして「ウマ ビッカ ファッシュファボール」とコーヒーを注文した。