Stories

  • Dec.10 Granada

    映画が好きです。と言った男性に恋をした。
    その彼が教えてくれた「ミツバチのささやき」。
    エリセの世界に魅了された。
    光と影。物語の奥に潜む、なんだろうこの掻き立てられる気持ち。
    エリセの映画の根底にスペイン内戦があること、わたしが生まれた年までスペインが独裁政権だったことを知る。
    私はカメラとミツバチのささやきのDVD、エリセについて書かれた本、フラメンコシューズ、暗幕のゲルニカをカバンに詰め込んでスペインへ向かった。
    最初に訪れたのは「サクロモンテの丘」の舞台、グラナダ。
    スペインの南に位置するこのあたりは早い段階でフランコ政権に飲み込まれていったと読んだ。「エル・スール」でエストレーリャが思う南は一年を通して暖かい地方だけれど、ここはシエラネバダの影響で雪も降るし、寒い。
    街の外れにあった古い教会。
    彼もここで窓から差し込む光を見ただろうか?
    けれどその光とこの光は違う。
    彼が見た光はいつの光なんだろう?
    これからエリセが住むであろうマドリッドへ向かう。
    会えるだろうか?
    そういえば、一緒に何か見に行きましょうって言ったきりになってしまった彼はどうしているだろうか?
    わたしはあなたに教えてもらった映画によって今スペインにいます。
    そんなことを考えながら随分長く見上げていた。

    存在の粒子のきっかけになった一枚。